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国産OSであるTRONと現代の教育DX

国産OSであるTRONと現代の教育DX

記事執筆者:管理人

記事執筆日:2024年04月21日 17時00分

記事更新日:2024年04月21日 17時36分

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タグ:コラム



日本の国産OS、TRON

1984年、坂村健さんという東京大学助手(現・東京大学名誉教授)がTRONプロジェクトという日本のデジタル領域の命運を懸けた構想を立ち上げました。
坂村健 当時東京大学助手
「主張しないOSだったから世界に広がった」TRONの生みの親・坂村健が語る - Yahoo!ニュース

TRONはThe Real-time Operating system Nucleusの略で、リアルタイムOS(車のエンジン制御や人工衛星やあらゆる家電に使う、速度が重要な組み込みOS)の共通基盤です。現在ではOSというとWindowsやAndroid、Macなどを一番最初に想像するかと思いますが、それらは情報処理系OSと呼ばれるものであり、人を相手にするコンピューターを動かすものです。情報処理系OSは応答速度よりも汎用性を重視します。一方でリアルタイムOSであるTRONは、人ではなくコンピューター同士の制御のために使われるもので、車のエンジン制御などミリ秒でも計算を遅らせられない分野で応答速度を最重要視しました。

実は1980年代、この日本の国産OSであるTRONは情報処理系OSとしてパソコンに入れることも視野に、マイクロソフトのWindowsなどと肩を並べて戦っていました。いえむしろ、当時のビジネスパソコン向けTRONであるB-TRONはWindowsやMac系よりも明らかに先進的でした。Windowsがまだ白黒の画面の時代にTRONではフルカラー表示。テキストだけでコンピューターを動かしていた時代に、TRONにはタッチペンとマウスまであり、ドラッグアンドドロップまで実装されていました。そして何より、数字とアルファベットしか打てないコンピューターに対して、TRONは日本語が扱えて、漢字入力のインターフェースまで備えていました。
ビジネス(Business)に使う目的のB-TRON
キーボードはかなり変わった形に見えますが、いま流行りの人間工学的に、5本の指の可動領域を考慮して設計されたものでした。
TRONを作った坂村さんはTRONの基本設計をすべて公開(オープンアーキテクチャ)し、お金儲けを追求しませんでした。
詳細はここでは割愛しますが、B-TRONは日米貿易摩擦や当時の政治的状況により消滅しました。しかし、オープンアーキテクチャであったTRONの遺伝子は今も残っており、現在でも日本国内の家電のなんと6割、世界でも3割のシェアでTRON系OSが組み込まれて活躍しています。

意識改革が必要

そんな坂村さんは現在、データや設計をオープンにすることでイノベーションを促進させようという運動を幅広くされています。ここ30年の日本は開発を社内でクローズドにすることによってデジタル領域で停滞してしまっています。その中でもやっとここ5年程度で、とりわけ公共交通機関のデータを積極的にオープンにし、様々なアプリで利用が可能になったのは、坂村さんの貢献によるところが大きいのです。
詳しくは坂村さんの著書『DXとは何か』(2021年)で述べられています。


教育における意識改革とは

しかしそれ以外の分野、とくに教育分野においてはデジタルの活用どころではないのが現状です。部活動や事務作業などの雑務に追われて、子どもたちに向き合う時間がないという、基本設計のミスが古いまま受け継がれています。そしてそれを現場の誰もが感じているのにもかかわらず、フィードバックと修正ができない組織構造になっています。
私達は今こそ破壊的創造により、教育業界を作り直さなければなりません。
坂村教授によると、DX(デジタルトランスフォーメーション)とは単なるデジタル化・効率化のことではないとのことです。DXは一つの組織だけでなく周囲の人間も含めた徹底的な意識改革のことであり、具体的に言えば、「本当にこの作業に意味があるんだっけ。そもそも無くしていいんじゃないか」「保護者からの学校への連絡は、先生の時間を一時的に奪う電話じゃなくていいんじゃないか」という、意思決定のプロセスを変える意識改革です。
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この小テストジェネレーターも、目指すものは単なる小テスト作成業務の効率化ではありません。暗記偏重型の学習は、日本の学生から大切な時間を奪っています。英単語の暗記という無駄な時間を費やしている間に、海外の学生たちは数学や物理などもっと実用的な学問を学んでいます。そしてそのことにうっすら気付きつつも、学校だけでなく、予備校・学習塾・出版業界などの外郭組織もまた、暗記偏重型学習の片棒をかつぎ、加担しているのが現状です。まずは私達がそのことを明確に意識し、文字通りの意識改革をしなければならないのだと思います。「これって本当に必要なんだっけ」と考え直し、海外に目を向けなければ日本は安泰ではない時代になってしまいました。

小テストジェネレーターのオープン思想と著作権障壁

短期的には、現状では暗記偏重型の勉強をしなければ大学に入り学問のスタート地点に立つということができません。小テストジェネレーターではそこへのアンチテーゼとして徹底的に先生が小テスト作成業務をラクにし、学生たちもまた徹底的に暗記をラクにすることで、もっと重要なことに時間を使ってほしいと思っています。また、小テストジェネレーターを作るうえでの最初の障壁は、市販の英単語帳の著作権でした。市販の英単語帳と併用できるサービスでなければ、教育現場での実用性はありません。だから誰もやってこなかったという部分もあると思います。
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しかし本質的には英単語自体に著作権は到底認められないし、その対訳への日本語訳にもよほどオリジナリティがない限りは同様です(さすがに例文は無理でしょうが)。英単語帳の順番通りにユーザーが復元できないようにしたり、汎用データベースを整備して単語の「順番のみ」を書籍関連データとして扱うことで、著作権周りの障壁をクリアしてきました。出版社からしても、小テストジェネレーターがあることで単語帳の売上が減るということが感じられない、少なくとも第三者からみてその事実が認められないように工夫しているつもりです。また、一般ユーザーが作ったデータなどに著作権侵害の疑いがあるデータが見つかった場合に、誰でもその旨を申告できるフォームも整備してきました。
最近では各書籍にアプリが付属していることも多くなってきました。しかしふつう、学生は中学〜高校〜大学に渡って英単語帳を1つしか使わないということはないでしょう。自分が覚えた単語・覚えていない単語を自分のデータとして手元に持てない、いわばクローズドなサービスでは意味がありません。近いうちに、これらのデータをユーザー自身が手元で活用できる状態を整備したいと思っています。

オープンデータやオープンアーキテクチャの促進により、無駄なものを捨てる。意思決定プロセスを見直す。そしてそんな思考回路を周囲のみんなと共有できる。そういう思想を教育の分野でも広げていきたいと思っています。
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